古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

我のみや憂き世を知れるためしにて
濡れそふ袖の名を朽たすべき

私だけが不幸な世を知った例として、さらに涙に濡れる袖の、その名までも朽ちさせなければならないのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

おほかたは我濡衣を着せずとも
朽ちにし袖の名やは隠るる

だいたい、私が濡れ衣を着せなくても、すでに朽ちてしまった袖の評判は隠れるものだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

荻原や軒端の露にそぼちつつ
八重立つ霧を分けぞ行くべき

荻原の軒端の露にすっかり濡れながら、幾重にも立つ霧を分けて帰って行かねばならないのだろう。

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源氏物語 - 紫式部

分け行かむ草葉の露をかことにて
なほ濡衣をかけむとや思ふ

分けて行く草葉の露を言いがかりにして、それでもなお私に濡れ衣を着せようとお思いなのか。

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源氏物語 - 紫式部

魂をつれなき袖に留めおきて
わが心から惑はるるかな

魂をつれないあなたの袖のもとに留めおいて、自分の心のせいで迷い惑っていることだ。

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源氏物語 - 紫式部

せくからに浅さぞ見えむ山川の
流れての名をつつみ果てずは

堰き止めるからこそ浅さが見えてしまうだろう。山川の流れのように、後々の評判を隠しきれないのなら。

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源氏物語 - 紫式部

女郎花萎るる野辺をいづことて
一夜ばかりの宿を借りけむ

女郎花のしおれている野辺を、どういうお心から、一夜だけの宿としてお借りになったのだろう。

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源氏物語 - 紫式部

秋の野の草の茂みは分けしかど
仮寝の枕結びやはせし

秋の野の草の茂みを分けて訪ねはしたけれど、仮寝の枕を結ぶようなことはしていない。

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源氏物語 - 紫式部

あはれをもいかに知りてか慰めむ
あるや恋しき亡きや悲しき

あなたの悲しみを、何によるものと知って慰めればよいのか。生きている人が恋しいのか、亡くなった人が悲しいのか。

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源氏物語 - 紫式部

いづれとか分きて眺めむ消えかへる
露も草葉のうへと見ぬ世を

どちらと区別して眺めようか。消えてはまた結ぶ露も、草葉の上だけのことではないと思うこの世なのに。

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源氏物語 - 紫式部

里遠み小野の篠原わけて来て
我も鹿こそ声も惜しまね

人里が遠いので小野の篠原を分けて来て、私もまた鹿のように、声を惜しまず泣いている。

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源氏物語 - 紫式部

藤衣露けき秋の山人は
鹿の鳴く音に音をぞ添へつる

喪服も涙に濡れている秋の山人は、鹿の鳴く声に、自分の泣く声を添えていることだ。

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源氏物語 - 紫式部

見し人の影澄み果てぬ池水に
ひとり宿守る秋の夜の月

見慣れたあの人の面影ももう澄んで映らない池の水に、ひとり邸を守っている秋の夜の月であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

いつとかはおどろかすべき明けぬ夜の
夢覚めてとか言ひしひとこと

いつになったらお訪ねすればよいのか。明けない夜の夢が覚めてからと、あなたがおっしゃったひとことは。

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源氏物語 - 紫式部

朝夕に泣く音を立つる小野山は
絶えぬ涙や音無の滝

朝も夕も声を立てて泣いているこの小野山では、絶えることのない涙が音無の滝となるのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

のぼりにし峰の煙にたちまじり
思はぬ方になびかずもがな

空へ昇っていったあの峰の煙に立ちまじって、思ってもいない方角へなびかずにいたいものだ。

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