古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

恋しさの慰めがたき形見にて
涙にくもる玉の筥かな

恋しさを慰めることのできない形見として、涙に曇る玉の箱であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

怨みわび胸あきがたき冬の夜に
また鎖しまさる関の岩門

恨みかねて胸の晴れようもない冬の夜に、いっそう固く鎖される関の岩門であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

馴るる身を恨むるよりは松島の
海人の衣に裁ちやかへまし

馴れ古びた我が身を恨むよりは、いっそ松島の海人の衣に裁ち替えてしまおうか。

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源氏物語 - 紫式部

松島の海人の濡衣なれぬとて
脱ぎ替へつてふ名を立ためやは

松島の海人の濡れ衣が着馴れたからといって、脱ぎ替えてしまったという評判を立ててよいものだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

契りあれや君を心にとどめおきて
あはれと思ふ恨めしと聞く

前世からの縁があるのだろうか。あなたのことを心にとどめて、いたわしいと思う一方で、恨めしいとも聞いている。

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源氏物語 - 紫式部

何ゆゑか世に数ならぬ身ひとつを
憂しとも思ひかなしとも聞く

どうして、世に数にも入らないこの身ひとつを、つらいとも思い、いとしいともお聞きになるのだろう。

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源氏物語 - 紫式部

数ならば身に知られまし世の憂さを
人のためにも濡らす袖かな

人の数に入る身であったなら、我が身のこととして世のつらさを知ったであろうに。人のためにも涙で濡らす袖であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

人の世の憂きをあはれと見しかども
身にかへむとは思はざりしを

他人の夫婦仲のつらさをいたわしいと見てはきたけれど、それが我が身に代わることになろうとは思わなかった。

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源氏物語 - 紫式部

惜しからぬこの身ながらもかぎりとて
薪尽きなむことの悲しさ

惜しくもないこの身ではあるけれど、これが最後だと思うと、薪が尽きるように命が終わってしまうことが悲しい。

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源氏物語 - 紫式部

薪こる思ひは今日を初めにて
この世に願ふ法ぞはるけき

薪を樵るような仏道への思いは今日を初めとして、この世で願う仏の教えの道は、この先も遠く長く続くことだろう。

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源氏物語 - 紫式部

絶えぬべき御法ながらぞ頼まるる
世々にと結ぶ中の契りを

これが最後となるはずの法会ではあるけれど、それでも頼もしく思われる。幾世にもわたってと結ぶ、あなたとの縁を。

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源氏物語 - 紫式部

結びおく契りは絶えじおほかたの
残りすくなき御法なりとも

結んでおくご縁は絶えることはあるまい。だいたい、私のほうこそ残り少ない身で、営める法会も少ないとしても。

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源氏物語 - 紫式部

おくと見るほどぞはかなきともすれば
風に乱るる萩のうは露

露が置いていると見えるのもわずかの間のことだ。ややもすれば風に乱れて散ってしまう、萩の上の露なのだから。

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源氏物語 - 紫式部

ややもせば消えをあらそふ露の世に
後れ先だつほど経ずもがな

ややもすれば先を争って消えていく露のようなこの世で、後れたり先立ったりする間を置かずにいたいものだ。

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源氏物語 - 紫式部

秋風にしばしとまらぬ露の世を
誰れか草葉のうへとのみ見む

秋風にしばらくもとどまらない露のようなこの世を、誰が草葉の上のことだけと見ることができようか。

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源氏物語 - 紫式部

いにしへの秋の夕べの恋しきに
今はと見えし明けぐれの夢

昔の秋の夕暮に見た姿が恋しく思われるのに、これが最期と見えたのは、明け方の薄暗がりの中の夢のようだった。

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