古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

花の香にさそはれぬべき身なりせば
風のたよりを過ぐさましやは

花の香に誘われるような身であったなら、風の便りを見過ごしたりするだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

本つ香のにほへる君が袖ふれば
花もえならぬ名をや散らさむ

もともと身に備わった香の匂うあなたの袖が触れるなら、花もこの上ない評判を世に広めることだろう。

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源氏物語 - 紫式部

花の香をにほはす宿にとめゆかば
いろにめづとや人のとがめん

花の香を漂わせている宿を尋ねて行ったなら、色に心を寄せる者だと人が咎めるだろう。

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源氏物語 - 紫式部

折りて見ばいとどにほひもまさるやと
すこし色めけ梅のはつ花

折って見たらいっそう香りもまさるだろうかと思う、もう少し色づいてほしい、梅の初花よ。

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源氏物語 - 紫式部

よそにてはもぎ木なりとやさだむらん
したに匂へる梅のはつ花

よそでは枝葉をもぎ取った木だと決めているのだろうか、内には匂っている梅の初花なのに。

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源氏物語 - 紫式部

人はみな花に心をうつすらむ
ひとりぞまどふ春の夜の闇

人はみな花に心を移しているのだろう。自分ひとりだけが春の夜の闇に迷っている。

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源氏物語 - 紫式部

をりからやあはれも知らむ梅の花
ただ香ばかりに移りしもせじ

折が折だから心を惹かれるのだろう。梅の花の、ただ香りだけに、これほど心が移ることもあるまい。

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源氏物語 - 紫式部

竹河のはしうち出でしひとふしに
深き心のそこは知りきや

竹河の橋のたもとと、その一節をわずかに歌い出した、そこに込めた深い心の底を知ってくれただろうか。

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源氏物語 - 紫式部

竹河に夜をふかさじといそぎしも
いかなるふしを思ひおかまし

竹河を歌って夜を更かすまいと急いで帰られたのは、どのような思いを残していかれたというのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

さくらゆゑ風に心のさわぐかな
おもひぐまなき花と見る見る

桜のせいで風が吹くたびに心が騒ぐことだ。人の心も察しない花だと見ていながら。

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源氏物語 - 紫式部

咲くと見てかつは散りぬる花なれば
まくるを深きうらみともせず

咲いたと見るそばから散ってしまう花なのだから、負けたことを深い恨みとも思わない。

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源氏物語 - 紫式部

風に散ることは世のつね枝ながら
うつろふ花をただにしも見じ

風に散ることは世の常だが、枝についたまま色あせていく花を、そのまま平気で見てはいられない。

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源氏物語 - 紫式部

心ありて池のみぎはに落つる花
あわとなりてもわが方に寄れ

そういう心があって池の水際に落ちる花よ、泡となってでもこちら側に寄ってきなさい。

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源氏物語 - 紫式部

大空の風に散れどもさくら花
おのがものとぞかきつめて見る

大空を吹く風に散ってしまっても、桜の花は自分たちのものだと思ってかき集めて見るのだ。

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源氏物語 - 紫式部

桜花にほひあまたに散らさじと
おほふばかりの袖はありやは

桜の花をあたり一面に散らすまいとして、覆いつくすほどの袖があるだろうか、ありはしない。

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源氏物語 - 紫式部

つれなくて過ぐる月日をかぞへつつ
もの恨めしき暮の春かな

冷たいまま過ぎてゆく月日を数えながら、何とも恨めしく思われる春の暮れであることだ。

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