源氏物語 - 紫式部
さてどうしたことか、物の数でもない我が身で思うようにならないのは、人に負けまいとする心なのだった。
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無理なことを。強い方によるはずの勝ち負けを、あなたの心ひとつでどうして負かせるというのか。
気の毒だと思って手をゆるめてほしい。生き死にをあなたに任せる我が身であるのなら。
花を見て春は過ごした。今日からは生い茂る嘆きの下に迷うのだろうか。
今日こそ分かった。空を眺めているような様子で、実は花に心を移していたのだと。
あはれという、無常なこの世での一言も、どのような人に向けてかけるものなのか。
生きているこの世では死ぬことも心のままにならないので、あなたの一言を聞かないまま終わってしまうのだろうか。
手に取ってかけられるものであったなら、藤の花の、松よりもまさるその色を見ることができただろうか。
紫の色は通っていても、藤の花は私の心のままにかかってはくれなかったのだ。
竹河を歌ったあの夜のことは思い出すだろうか。偲ぶほどの節もなかったけれど。
年月が流れて、頼みに思わせてくれたことも空しくなった竹河に、この世はつらいものだと思い知った。
私を残して連れ合いが去っていった水鳥のように、はかないこの世に私だけが生き後れてしまったのだろうか。
どうしてこのように育ってこられたのかと思うにつけても、水鳥のようなつらい身の上の宿縁が思い知られる。
泣きながらも羽をかけて育ててくださる父上がいなかったら、私は孵らない卵のまま終わってしまっただろう。
連れ添った人も住まいも煙になってしまったのに、どうして私の身だけが消えずに残ったのだろう。
俗世を厭う気持ちはそちらの山に通っているのに、幾重にも立つ雲であなたが私を隔てているのだろうか。