金槐和歌集 - 源実朝
ひとりで寝る草の枕に置いた露の上に、見知らぬ野原の月を見ることだ。
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岩の根元の苔を枕とし、その枕に露が置いて、幾夜この深山の月のもとで寝たことだろうか。
旅の空の下、慣れない粗末な土間の小屋の夜の寝床に、わびしいほどに時雨が漏ってくることだ。
袖を枕にして、霜の置いた寝床の苔の上で夜を明かすばかりの佐夜の中山であることだ。
猪名野の原で篠竹を枕として寝ると、その枕に置いた霜であろうか、月の光が宿っている。
旅の衣を片方だけ敷いて寝る夜半はひどく冷えこんで、野中の仮の庵に雪が降ったことだ。
逢坂の関の山道は越えかねてしまった。昨日も今日も雪が積もっているので。
雪が降って人の足跡がすっかり絶えてしまったとしても、越の山道を私は絶えず通っていこう。
片袖を敷いてひとり寝る衣の袖はひどく冷えて耐えがたい。雪の深い夜の峰の松を吹く風よ。
明け方の夢を見ている枕に雪が積もり、目覚めた私のもとを訪れるのは峰の松を吹く風である。
たまに来てほんの少し聞くだけでも悲しい。山に住む人の苔むした庵の庭に吹く松風は。
たまに来て、たまに宿を借りる人もほかにはいないだろう。私をしみじみといとおしく思っておくれ、庭の松風よ。
夕月の光が差し、棹を差す川瀬の、水に馴れた棹のように、馴れていてもなお親しめない波の音であることだ。
空が海なのか、海が空なのか、見分けることができない。霞も波も一面に立ち満ちていて。
箱根の山道を私が越えてくると、伊豆の海が開け、沖の小島に波が寄せているのが見える。
春雨にびっしょり濡れながら、山道を行くのだろう、あの山人は誰なのか。