古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

鳥の音も聞こえぬ山と思ひしを
世の憂きことは訪ね来にけり

鳥の声も聞こえない深い山だと思っていたのに、世のつらいことはここまで訪ねて来たのだった。

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源氏物語 - 紫式部

おなじ枝を分きて染めける山姫に
いづれか深き色と問はばや

同じ枝を染め分けた山姫に、どちらが深い色かと尋ねてみたいものだ。

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源氏物語 - 紫式部

山姫の染むる心はわかねども
移ろふ方や深きなるらむ

山姫が色を染め分ける心はわからないけれども、色が移っていくほうこそ深いのだろう。

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源氏物語 - 紫式部

女郎花咲ける大野をふせぎつつ
心せばくやしめを結ふらむ

女郎花の咲いている広い野を人に入らせまいとして、心狭くも標縄を張っているのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

霧深き朝の原の女郎花
心を寄せて見る人ぞ見る

霧の深い朝の原の女郎花は、深く心を寄せている人だけが見るものだ。

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源氏物語 - 紫式部

しるべせし我やかへりて惑ふべき
心もゆかぬ明けぐれの道

道案内をした私のほうがかえって迷うことになるのだろうか。思うようにならぬまま帰る、明け方の薄暗い道で。

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源氏物語 - 紫式部

かたがたにくらす心を思ひやれ
人やりならぬ道に惑はば

あれこれと思い暮らしている私の心を思いやってほしい。自分のせいで道に迷うというのなら。

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源氏物語 - 紫式部

世の常に思ひやすらむ露深き
道の笹原分けて来つるも

世間によくあることと思っているのだろうか。露の深い道の笹原を分けて来たことも。

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源氏物語 - 紫式部

小夜衣着て馴れきとは言はずとも
かことばかりはかけずしもあらじ

夜着を着て馴れ親しんだ仲とまでは言わないが、恨み言くらいは言わせてもらってもよいだろう。

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源氏物語 - 紫式部

隔てなき心ばかりは通ふとも
馴れし袖とはかけじとぞ思ふ

隔てのない心だけは通い合うとしても、馴れ親しんだ仲だとはおっしゃらないでほしいと思う。

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源氏物語 - 紫式部

中絶えむものならなくに橋姫の
片敷く袖や夜半に濡らさむ

仲が絶えてしまうわけでもないのに、橋姫のようにあなたは独り寝の袖を、夜中に涙で濡らすのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

絶えせじのわが頼みにや宇治橋の
遥けきなかを待ちわたるべき

絶えることはないというお言葉を頼みにして、宇治橋のように遥かな仲を待ち続けるべきなのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

いつぞやも花の盛りに一目見し
木のもとさへや秋は寂しき

いつだったか花の盛りに一目見た木のもとまでも、秋は寂しく感じられることだ。

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源氏物語 - 紫式部

桜こそ思ひ知らすれ咲き匂ふ
花も紅葉も常ならぬ世を

桜こそが思い知らせてくれる。咲き匂う花も紅葉も、変わらずにはいられないこの世であることを。

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源氏物語 - 紫式部

いづこより秋は行きけむ山里の
紅葉の蔭は過ぎ憂きものを

どこから秋は去っていったのだろう。山里の紅葉の蔭は、立ち去りがたいものであるのに。

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源氏物語 - 紫式部

見し人もなき山里の岩垣に
心長くも這へる葛かな

かつて会った人ももういない山里の岩垣に、変わらぬ心で長く這いかかっている葛であることよ。

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