源氏物語 - 紫式部
秋が終わって寂しさの増す木のもとを、吹き過ぎていかないでほしい、峰の松風よ。
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若草のように共寝をしようと思うわけではないが、気持ちが晴れずふさぎこんでいる心地がする。
眺めているのは同じ空なのに、どうして心もとなさを添えてくる時雨なのだろう。
霰の降る深い山里では、朝も夕も、眺める空がずっと暗く曇っている。
霜が冷たく凍る水際の千鳥が、耐えかねて鳴く声の悲しい明け方であることよ。
明け方の霜を払って鳴く千鳥は、物思いに沈む人の心を知っているのだろうか。
空が曇って日の光も見えない奥山で、心を暗くして過ごすこのごろであることよ。
紅の血の涙が落ちても甲斐がないのは、形見となる喪服の色に染めることができないからなのだ。
後れまいと、空を渡っていく月を慕うことだ。いつまでも住み続けられるこの世ではないのだから。
恋いわびて死ぬための薬がほしいので、雪の山に入って行方をくらましてしまおうか。
過ぎ去ったことを思い出してみても頼りないのに、行く末までかけて何を頼みにすればよいのだろう。
行く末が短いものだと思うのなら、せめて目の前にいる間だけでも、私に背かないでほしい。
亡き宮様に差し上げようと幾年もの春ごとに摘んできたので、今年も例年どおりの初蕨である。
今年の春は誰に見せればよいのだろう。亡き人の形見として摘んでくださった峰の早蕨を。
折った人の心に通じている花なのだろうか。表の色には出さず、内に隠れて香っているのは。
見る人が言いがかりをつけてくる花の枝は、気をつけて折るべきだった。