古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

大空の月だに宿るわが宿に
待つ宵過ぎて見えぬ君かな

大空の月さえ宿るこの私の家に、待つ宵は過ぎたのに姿の見えないあなたであることよ。

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源氏物語 - 紫式部

山里の松の蔭にもかくばかり
身にしむ秋の風はなかりき

宇治の山里の松の蔭でも、これほど身にしみる秋の風は経験しなかった。

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源氏物語 - 紫式部

女郎花しをれぞまさる朝露の
いかに置きける名残なるらむ

女郎花はいっそうしおれている。朝露がどのように置いていった名残なのだろう。

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源氏物語 - 紫式部

おほかたに聞かましものをひぐらしの
声恨めしき秋の暮かな

宇治にいたなら何気なく聞いていただろうに、ひぐらしの声が恨めしく聞こえる秋の暮であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

うち渡し世に許しなき関川を
みなれそめけむ名こそ惜しけれ

見渡すかぎり世間に認められない仲なのに、たびたび逢っていると言われる評判が惜しまれる。

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源氏物語 - 紫式部

深からず上は見ゆれど関川の
下の通ひは絶ゆるものかは

表面は深くないように見えるけれども、関川の水底の流れが絶えないように、私の心が絶えることはない。

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源氏物語 - 紫式部

いたづらに分けつる道の露しげみ
昔おぼゆる秋の空かな

むだに草を分けて通った道の露が多いので、昔のことが思い出される秋の空模様であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

また人に馴れける袖の移り香を
わが身にしめて恨みつるかな

ほかの男に馴れ親しんだ袖の移り香を、身にしみるほど深く恨んだことだ。

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源氏物語 - 紫式部

みなれぬる中の衣と頼めしを
かばかりにてやかけ離れなむ

馴れ親しんだ二人の仲だと頼みにしてきたのに、これほどのことで離れてしまうのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

結びける契りことなる下紐を
ただ一筋に恨みやはする

結んだ契りが私とは別のものである下紐を、ひたすら一途に恨んだりするだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

宿り木と思ひ出でずは木のもとの
旅寝もいかにさびしからまし

昔泊まった宿だと思い出さなかったら、木のもとの旅寝はどれほど寂しかっただろう。

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源氏物語 - 紫式部

荒れ果つる朽木のもとを宿りきと
思ひおきけるほどの悲しさ

荒れ果てた朽木のもとを、かつて泊まった宿だと思っていてくださるほどの、その悲しさである。

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源氏物語 - 紫式部

穂に出でぬもの思ふらし篠薄
招く袂の露しげくして

穂に出さないまま物思いをしているようだ。招くように揺れる篠薄の袂には、露が多くおりている。

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源氏物語 - 紫式部

秋果つる野辺のけしきも篠薄
ほのめく風につけてこそ知れ

秋が終わる野辺の様子も、篠薄をわずかに揺らす風によってこそ知られる。

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源氏物語 - 紫式部

すべらきのかざしに折ると藤の花
及ばぬ枝に袖かけてけり

帝の插頭にと折ろうとして、藤の花の手の届かない枝に袖をかけてしまった。

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源氏物語 - 紫式部

よろづ世をかけて匂はむ花なれば
今日をも飽かぬ色とこそ見れ

幾万年にわたって咲き匂うはずの花なのだから、今日もまた見飽きることのない色として見るのだ。

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