金槐和歌集 - 源実朝
年を経れば老い衰えて朽ちてしまうに違いないこの身は、住の江の松ではないのに。
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たまたま私を尋ねる人があったとしても、野中の松よ、私を見たと語らないでおくれ。
磯の松はどれほどの久しい年月を経てきたのだろうか。ひどく木高く聞こえる風の音であることだ。
磯辺に立っている一本の松よ、ああ、なんとも所在なさそうだ。友もなしに。
大海の磯もとどろくばかりに寄せる波は、割れて、砕けて、裂けて、散ることよ。
箱根の湖には心があるのだろうか。二つの山にかけて、どうしてためらうように揺れ動いているのか。
ここは陸奥のどこにあたるのだろうか。塩竈の浦というわけでもないのに、塩を焼く煙のように煙が立つのが見える。
いつもこのように寂しいものなのだろうか。葦葺きの小屋で、海人が気ままに焚いている藻塩火は。
紅の色に幾度も染め重ねたような色は、山の端に日が沈む時の空であったのだ。
浜辺にある前川の川瀬を流れゆく水のように、早くも今日は暮れてしまったことだ。
歩いて行く人が渡ると揺れる葛飾の真間の継橋は、朽ちてしまったのだろうか。
昔を偲ぼうというわけでもないのに、石上の古びた里に、私はやって来たことだ。
あわれなことだ。空のはるか彼方を飛んで行く雁も、このような姿になってしまったと思うと。
真っ暗な闇の中に、空の雲の幾重にも重なる雲に隠れて、雁が鳴いているようだ。
沢辺から空へと通う葦辺の鶴も、つらいことがあるのだろうか、声を上げて鳴いてばかりいるのは。
夜明けの頃、跡も残さない波の上で鳴く千鳥よ、ああ大げさなことだ。あわれ、いつまで鳴いているのか。