古典和歌stream

山家集 - 西行

あはれとて問ふ人のなどなかるらん
物思ふ宿の荻の上風

あわれだと思って訪ねてくれる人が、どうしていないのだろう。物思いに沈む家には、荻の葉の上を吹く風ばかりが訪れて。

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山家集 - 西行

わりなしやさこそ物思ふ袖ならめ
あきにあひても置ける露かな

どうにもならないことだ。いかにも物思いをする袖ではあろうが、秋に出会って、あの人に飽きられてもなお、露が置いていることよ。

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山家集 - 西行

秋深き野辺の草葉に比べばや
物思ふ頃の袖の白露

秋の深まった野辺の草葉に置く露と比べてみたいものだ。物思いをするこの頃の、私の袖に置く白露を。

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山家集 - 西行

いかにせん来む世の海人となるほども
みるめ難くて過ぐるうらみを

どうしたらよいのだろう。来世で海人に生まれ変わるほど先になっても、海松布を刈るように逢う機会も得られないまま過ごしてゆく、この恨みを。

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山家集 - 西行

物思ふと涙ややがて三瀬川
人を沈むる淵となるらん

物思いをして流す涙は、やがて三途の川となって、人を沈める淵となるのだろうか。

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山家集 - 西行

あはれあはれこの世はよしやさもあらばあれ
来む世もかくや苦しかるべき

ああ、ああ、この世はもうどうなってもかまわない。そうであるならそれでよい。けれども来世もこのように苦しいのだろうか。

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山家集 - 西行

頼もしな宵暁の鐘の音
物思ふ罪もつきざらめやは

頼もしいことだ、宵と暁に撞く寺の鐘の音は。恋に物思いをする罪も、尽きないことがあろうか、きっと尽きるだろう。

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山家集 - 西行

つくづくと物を思ふにうち添へて
折あはれなる鐘の音かな

しみじみと物思いにふけっているところに、さらに加わって、折も折、哀れ深く響いてくる鐘の音であることよ。

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山家集 - 西行

情けありし昔のみなほ偲ばれて
長らへまうき世にもあるかな

人の情けがあった昔ばかりがいっそう偲ばれて、生き長らえるのも気が進まない世の中に、それでも生きていることだ。

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山家集 - 西行

軒近き花橘に袖しめて
昔を偲ぶ涙包まん

軒近くに咲く花橘の香を袖にしみこませて、昔を偲んで流す涙を、その袖に包もう。

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山家集 - 西行

何事も昔を聞くは情けありて
ゆゑあるさまに偲ばるるかな

何事も、昔のことを聞くと情趣があって、由緒ありげなさまに自然と偲ばれることだ。

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山家集 - 西行

我が宿は山のあなたにあるものを
何に憂き世を知らぬ心ぞ

私の住むべき宿は山の向こうにあるというのに、どうしてこの憂き世のつらさを思い知らない心なのだろうか。

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山家集 - 西行

曇りなう鏡の上にゐる塵を
目に立てて見る世と思はばや

曇りもなく澄んだ鏡の上にとまっている塵を、目にとめて見るように、この世を見る世だと思いたいものだ。

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山家集 - 西行

長らへんと思ふ心ぞ露もなき
厭ふにだにも堪へぬ憂き身は

生き長らえようと思う心など少しもない。この世を厭うことにさえ堪えきれない、つらいわが身は。

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山家集 - 西行

思ひ出づる過ぎにし方を恥づかしみ
あるに物憂きこの世なりけり

思い出される過ぎ去った昔のことが恥ずかしいので、生きているのも気が重いこの世であることだ。

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山家集 - 西行

世の中にすまぬもよしや秋の月
濁れる水のたたふさかりに

世の中に住まないのもよいことだ。秋の月も、濁った水が満ちている盛りには澄んで映りはしないのだから。

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