山家集 - 西行
山里に心は深く入り込んでいたのに、柴の煙が立ちのぼるように、私は立ち帰ってしまったのだった。
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山家集
惜しくもないこの身を捨てきれずに過ごしているうちに、また長い迷いの闇に迷ってしまうのだろうか。
世を捨てきれない心のうちに闇を閉じこめて迷うであろうことは、あなたひとりだけであろうか、いや私も同じである。
誰もがみな晴れることのない闇にいる悲しさを、あなたが導いてください、光が見えるかと。
導きたいと思っても、どうして私に道案内などできようか。仏の教える道に入るのであれば、話は別であるが。
世の中で、有明の月のように心ある人はみな、こうして闇に迷うことはないものなのに。
世を背こうとする心だけはあるが、有明の月のように、尽きることのない闇はあなたに晴らしていただこう。
潮に馴れ親しんだ苫屋も荒れ果てて、憂き波に寄るべもない海人、つまり身を寄せる所もない尼だとはご存じないのですか。
苫屋に波が立ち寄ることもないありさまで、海人が住むにはあまりに住みづらいほどであることが見て取れた。
山から吹きおろす嵐の音のこれほどの激しさに、いつの間に慣れ親しんだあなたの住まいなのか。
山家集 - 待賢門院兵衛
憂き世にはもういるまいと、嵐の風に誘われるようにして家を出た人の住まいだと見ることだ。
天から降りた神という名を吹上に負う神であるならば、雲を吹き払って晴れさせ、その光を現したまえ。
かつて能因の願いによって苗代に堰き下された天の川の水であるが、その雨を止めるのも、また神の御心によるものであろう。
山家集 - 待賢門院堀河
この世にいるうちに親しく語らっておこう、ほととぎすよ。死出の山路の道案内ともなっておくれ。
ほととぎすが鳴くように、私も泣く泣くあなたと語らいましょう。あなたが死出の山路にさしかかったならば。
世の中を厭い捨てるまでのことは難しいだろうが、この仮の世の、かりそめの宿を貸すことさえ惜しむあなたであることよ。