源氏物語 - 紫式部
嘆きに堪えかねて身を捨てるとしても、亡きあとの魂につらい評判を流すことになるのが気にかかる。
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亡骸さえもこのつらい世にとどめずにいたなら、どこを墓としてよいかと、母上も恨むことだろう。
後の世でまた会えることを思っていてほしい。この世の夢のようなことに心を惑わせないで。
鐘の音の消えていく響きに私の泣く声を添えて、私の一生は終わったと母上に伝えてほしい。
忍び音をもらしてあなたも泣いているのだろうか。かいもなく鳴く死出の田長に、心が通っているのなら。
橘の薫るあたりでは、時鳥は気をつけて鳴くべきであった。
自分もまた、このつらい古里が荒れ果ててしまったら、誰が宿り木の蔭を偲んでくれるだろう。
しみじみと感じ取る心は人に劣らないけれど、物の数でもない身であるから、消え入るような思いで日を過ごしている。
世は無常だとこれほど見てきたつらい身でさえ、人に知られるほどには嘆いたりしない。
荻の葉に露を吹き結ばせる秋風も、夕暮れにはとりわけ身にしみることだ。
女郎花の咲き乱れる野辺に混じったとしても、露に濡れたという浮ついた評判を、私が身に負うことがあろうか。
花といえばその名こそ浮ついて聞こえるけれど、女郎花はありふれた露に乱れたりはしない。
旅寝をして、なお試してごらんなさい。女郎花が盛りの色を移すか移さないかを。
宿を貸してくれるなら一夜くらいは泊まろう。ありふれた花に心を移すことはないとしても。
確かにいると見えたのに手には取れず、見ればまた行方も知れず消えてしまった蜻蛉であることよ。
身を投げた涙の川の早い瀬に、柵をかけて誰が私を引き止めたのだろう。