山家集 - 西行
住むことは場所によるものだとは言うけれども、高野山はやはりしみじみと心にしみる所であることよ。
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初めは浅く出た心の水が満ちてきたのであろうか。山に住み、心が澄んでゆくにつれて、深くなってゆくことだ。
嵐だけが時々窓を訪れて音を立て、明けてしまった空に残る夜の名残を思うことだ。
今宵こそは、お慈悲の厚さとともに、いただいた小袖の厚さを身に感じる心地がして、嵐の音をよそごとのように聞いたことだ。
露も漏らない岩屋でも袖は濡れたのだと聞いていなかったならば、どんなに不思議に思ったことだろう。
分け入ってきた小笹の露にぐっしょりと濡れながら、乾かしかねている墨染の袖であることよ。
袈裟の色を若紫に染めてしまったのか。苔の衣の粗末な袂を、思い返して捨てて。
山家集
消えてしまいそうな露のような命も、あなたが見舞ってくださる言葉によって、起きていることができたことだ。
吹き過ぎる風さえやんだならば、頼もしいことだ。秋の野一面に置く露の白玉は。
琴の音に涙を添えて流すことだ。もし命が絶えていたならばと思う、その哀れさに。
山家集 - 小侍従
頼みにすることもない身なのに、今日まで、いったい何につなぎとめられている命なのだろう。
定めのない世だ。風邪を患っていないときでさえ、また来ようということを頼みにできる世であろうか。
はかなく散る木の葉を見るにつけて思うことだ。風が誘って散らしてしまいそうな、露のような命を。
私が死んでいなくなったら、この里の人々は、秋の深い露を袂にかけて、涙ながらに私を偲んでくれるだろうか。
さまざまに哀れの多い別れであることよ。私の心をあなたの家に留めて去ってゆくのだから。
山寺に帰りはするけれども、人々の情けに引かれて、心は身にも添わなくなってしまったことだ。