山家集 - 西行
いたけもる海人を見る時節になったことだ。えぞかけ島を煙が立ちこめている。
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武士が鍛錬する武芸の慰みは晴れがましいものだ。あちそのしさり、鴨の入れ首といった技も。
陸奥の奥が、心ひかれて知りたく思われることだ。壺の碑や、外の浜を吹く風が。
朝に帰ってゆくかりゐうなこの群れの仲間たちは、原の岡山を越えてしまっただろうか。
鹿が伏している木陰の暗がりの下の、巻きついた葛の葉を、吹いて裏返す秋の初風であることよ。
声をそろえて、もりかきみかが鳴いているのが聞こえる。示し合わせて妻を恋うているのであろうか。
菫の咲く横野に茅花が咲いたので、人々は思い思いに通ってくるようだ。
紅の色でありながら、蓼の穂のその辛さよ、人が目にもとめないのは、つらいことだ。
蓬の生い茂る荒れた庭は、ありさまが変わっていることだ。庭の面に、烏扇がどうして茂っているのだろう。
刈り残した水辺の真菰に隠れて、陰をわがもののような顔をして鳴く蛙であることよ。
柳原よ、もし川風の吹かない木陰であったならば、蝉の声も暑苦しく聞こえたであろうか。
久木が生えて、涼めとばかりに作られた木陰なのであろうか。波の打ち寄せる岸に風が吹き渡って。
月を映すために、水錆を浮かせまいと思っていたのに、緑一面に池を敷きつめてしまった浮草であることよ。
願いごとは、御阿礼の注連に引く鈴のように、かなわないならば、決して鈴も鳴るまいと思う。
み熊野の浜木綿の生える浦は寂れて、人並みに、寄せる波のように年が重なってゆくことだ。
古い住まいへと分け入ってゆくと、鹿の伏す浅茅に置いた露がこぼれ落ちることだ。