山家集 - 西行
雪を分けて深い山路に籠もってしまったならば、年が改まってからあなたに会うことになるのだろうか。
詳細を見る
山家集 - 中宮大夫
分けて行く山路の雪は深くても、早く戻ってきなさい。改まる年とともに。
霞んではいるけれども、まだ年のうちだからと春だとも分かちかねているうちに、春を告げているらしい山川の水の音であることよ。
春だとはやはり思われない心であることよ。雨が降り、古い年のままのような気持ちばかりがして。
年はもう月の順を追って越えてしまったのだなあ。なるほど摘んでいるはずだ、柴の若芽を。
なんとなく、雪になったと聞くその日から、心にかかってならない吉野の山であることよ。
いつの間にか、もう初春の雨が降ったことだ。野辺の若菜も生え伸びたことだろうか。
この山路こそは雪の下を流れる水もまだ解けていないだろうが、都の空はもう春めいていることだろう。
雪を分けて、外山の谷の鶯は、麓の里に春が来たことを告げているのだろうか。
気がかりなことだ。春の日数が経つにつれて、嵯峨野の雪は消えてしまったのだろうか。
山家集 - 静忍
あなたがまた戻って訪ねて来るかと待っているうちに、まだ消えきらずにいる野辺の淡雪であることよ。
すっかり思い切って古巣に帰ってきた鶯は、旅先のねぐらが住みづらかったのだろうか。
月を見ていると、風に桜の枝がしなって、もうすぐ花だよと告げているような心地がすることだ。
かつて花を見たあの昔の心を新たにして、吉野の里に住もうと思うのだ。
心を込めながら、「花」という果物を摘んだことだ。吉野に住む人、みやたてへの贈り物として。
山家集 - みやたて
深い志を込めて運んでくださったみやたてへの贈り物を、悟りの花の開く春になぞらえて受け取ってほしい。