山家集 - 西行
枝を折って道しるべをしてきたこの山よりも、さらに山深く分け入ろう。つらいことを耳にしない所があるかと。
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秋は暮れてゆき、あなたは都へ帰ってしまったならば、どんなにか哀れであるにちがいない旅の空であることよ。
山家集 - 大宮の女房加賀
あなたを残して旅立つ空の涙がちな湿っぽさに加えて、秋までもが暮れてゆく旅の悲しさであることよ。
露の置いていた庭の小萩も枯れてしまった。いったい都のどこに秋がとどまっているというのだろう。
慕わしい秋は少しもとどまっていない都へと、どうしてあれほど急いだ舟出だったのだろう。
白河の関の番小屋を守るように、その隙間から漏れ入る月の光は、旅人の心を引き留めるのであったよ。
都を出て逢坂の関を越えた時までは、心にかすかに思い浮かべていただけの白河の関であることよ。
枯れてしまって松のない跡となった武隈では、見たと言っても、二木と言っても、甲斐のないことだろう。
踏むのがためらわれる紅葉の錦が一面に散り敷いて、人も通わない思わくの橋であることよ。
名取川の岸の紅葉が水に映る姿は、岸と同じ錦を川底にまでも敷いている。
とりわけ心までも凍りつくほどに冷えわたることだ。衣川を見にやって来た、ちょうど今日という日に。
比べるもののない思い出となる、出羽の国の桜であることよ。その薄紅の花の美しい色つやは。
都に近い小野や大原を思い出させる、柴を焼く煙のしみじみと哀れであることよ。
風の荒い柴の庵では、いつもよりも、夜中の寝覚めがことに悲しいことであるよ。
なんとなく、都の方の様子に耳を傾けて思いを寄せる空は、親しみを覚えて自然と眺められることだ。
山家集
筆で書き流して伝える手だてもない。心の内は、どうか汲み取って知ってほしい。