山家集 - 西行
今となっては、私は恋をする人を慰め見舞ってやろう。恋とはこの世でつらいことだと、身にしみて思い知られたから。
詳細を見る
物思いにふけって眺めることが、つらい我が身の癖になりきってしまって、夕暮れでない時にも、ついしてしまう。
思っても、思う甲斐がまるでないことだ。私の思いも知らない人を思っているので。
綾にひねり編んだささめの小蓑を衣として着よう。涙の雨をしのぐのを兼ねて。
どうしてこのように、今さら事新しく人が尋ねるのだろう。私が物思いをするのは、もう古いことなのに。
死んでしまいたいなどと、どうして思うのだろう。来世でも、恋は本当につらいものだと聞いているのに。
どうにもならないことだ。いつを物思いの終わりとして、月日を送っている我が身なのだろう。
かわいそうなことよ。今さらに心が幼くなって、魂も消え入るような恋をすることよ。
あなたを慕う心の内は子どものようになって、涙もろくもなってしまう我が身であることよ。
慕わしいあなたの心の色を、どうにかして露ほども散らさずに、袖に包んでおきたい。
いくらも生き長らえることのできないこの世の中で、物思いをせずに過ごせるすべがあればよいのに。
いつになったら私は、塵の積もった床を払い清めて、来ようと約束してくれる人を待つことができるのだろう。
丈も高く波立つ袖にいっぱいにたたえて、人目を忍ぶことよ。袂の滝に落ちる波を。
恋のつらさのために、とうとう涙で朽ちてしまった我が袖なのに、どうしてあれほど心を尽くして忍んできたのだろう。
自分の心から、自分の心に物思いをさせて、我が身を苦しめている我が身であったよ。
一人で着て我が身にまとう唐衣は、しおしおと泣き濡らされてしまうことだ。