山家集 - 西行
雪が積もって、木の種類も区別せずに咲く花なのだろうか。常緑の松さえも見えなくなってしまった。
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花と見える梢の雪に、月の光が冴え冴えと照らして、たとえようもない心地がする。
見まがう白い色を梅の花だとばかり見て通り過ぎてゆくと、雪の花には香りがなかったよ。
ちょうどよい折に、嬉しくも雪が埋めてくれることよ。すっかり籠もってしまおうと思っている山路を。
いっそのこと、谷の細道を埋めてしまえ、雪よ。道があるからといって、人が通ってくるはずもないのだから。
谷の庵に、玉の簾を掛けることなどあっただろうか。もし、垂れ下がるつららが軒を閉ざさなかったならば。
樒を置く閼伽の折敷に縁がなかったならば、霰はいったい何に玉として散り留まっただろうか。
岩にせき止められた閼伽井の水がわずかで心もとないのに、心を澄ませよとばかりに宿っている月であることよ。
しみじみと心を打たれることだ。同じ野山に立っている木なのに、このように大師の誕生のしるしとなる縁があったとは。
いつか大師にめぐり逢うであろう縁こそ、まことに得がたくありがたい。険しい山に残る大師の誓いの跡を見るにつけても。
筆の山によじ登って、見たことであるよ。苔の下にある岩の様子を。
最初に立て始める、網を捕る浦の初竿は、殺生の罪の中でもとりわけ重いものであることよ。
浜に下り立って浦の田で拾い物をする漁師の子は、つみという貝を拾うことから、殺生の罪を習うのであったよ。
真鍋島から塩飽島へ通う商人は、積み荷を買い、罪を櫂として海を渡るのであったよ。
同じことなら、牡蠣を串に刺して干すべきだ。蛤よりは、串柿に通じて名前もふさわしい。
栄螺の住む瀬戸の岩のくぼみを探し出して、急いで潜っていった海人の様子であることよ。