山家集 - 西行
岩の根もとに、一方に向いて並んで波に浮かびながら、鮑を求めて潜る海人の長であることよ。
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小鯛を引く網の浮き縄を、縒り合わせて組んでいる。浮きを使うつらい殺生の仕事のある塩崎の浦であることよ。
霞の立ちこめる中、波の初花が折れかかるように白く砕ける沖で、桜鯛を釣る海人の舟であることよ。
海人が磯で漁をして持ち帰る品々は、小螺、蛤、寄居虫、細螺である。
磯菜を摘もう。今生えはじめた若い布海苔、海松布、ぎばさ、ひじき、心太を。
菅島と答志の小石を分け換えて、黒と白とを混ぜ合わせよ、浦の浜風よ。
さき島の白い小石を、高い波が答志の浜に打ち寄せたのだろう。
烏崎の浜の小石かと思うことよ。白も混じらない菅島の黒い小石は。
対戦させてみたいものだ。白い鷺と黒い烏とが碁を打つならば、答志と菅島の黒と白の浜の石を使って。
今こそわかった。二見の浦の蛤を、貝合わせのためにと、こうして集めて覆っていたのであったよ。
真珠を採ったいがいの殻を積み上げておいて、宝のあったその跡を見せているのであったよ。
伊良湖崎に、鰹を釣る舟が並んで浮かんで、南風の荒い波に浮かびながら岸へ寄ってくることだ。
巣鷹が渡ってゆく伊良湖が崎を不安に思って、やはり木へと帰ってゆく山帰りの鷹であることよ。
はし鷹を、むやみに渡らせることもせず、年を経させて手に据えている人の、なんとめったにない世であることよ。
宇治川の早瀬を落ちるように舞い下る漁舟の、銛を突き入れる動きに行き違う、鯉の群れであることよ。
小鮠が集まる沼の入江の藻の下は、人が沈めておいたのではない、天然の柴漬けであったよ。