山家集 - 西行
月に恥じて、表に出ることができない心であることよ。眺めている私の袖に、月の光が涙に宿って映るので。
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見る人ごとに心を苦しめておいて、いったい何が月の取り柄だというのだろう。
袖が涙に濡れているのは、つらい我が身の袖の癖であるのに、それを月を見たせいにしてしまったことよ。
長年眺めてきた月が、どれほど懐かしく思われることだろう。この世が雲の彼方の遠いものとなってしまったならば。
いつか私はこの世の空から遠く隔たってしまうのだろう。ああ、ああ、と月をしみじみ思いながら。
露も置いていたのに、もう消えてしまった。繰り返しはかなさを思い知って、一人で見たことだ、朝顔の花を。
いったんは都を捨てて出たけれども、めぐりめぐって、やはり木曽の懸け橋のような危うい道を渡っている。
世を捨てたけれども、隠れ住まない人になってしまったので、やはり世にいるのと似たようなものであったよ。
世の中を捨てたのに、捨てきれない心地がして、都から離れられない我が身であったよ。
世を捨てた時の心をさらに新たにして、今見ている世の人々と、すっかり別れてしまおう。
考えてもみよ、心よ。人がいるならば世間にも恥じよう。それでもなお、そうしてよいものかと、自らを諫めるばかりである。
呉竹の節のように、憂きことの多くない世の中であったならば、この君こそはと、進み出て仕えもしただろうに。
善し悪しを思い分けることこそ苦しいものだ。ただあるがままにしていれば、そのまま生きていられる身なのに。
深く山に入るのは、月のためというわけでもないのに。つらい世を忍んで住もう、み吉野の山に。
この里は、嵯峨の帝の御狩の跡であろうか。野山さえも、ついには荒れ変わってしまったことよ。
庭の岩に目を留める人もいなかっただろう。もし趣のある姿に立てて置かなかったならば。